妻の話2

二人目は女の子でした

この子が生まれたとき、義母の母親、すなわち、義祖母江代さんが会いに来てくれた

義祖母江代さんは90歳近かったのに会いに来てくれた

嬉しかったな

妻の親族は、根も葉もない、私の悪口をいう連中ばかりだったから大嫌いで、二度と会いたくなかったけど、この義祖母江代さんはなんの気にもせずに会いに来てくれた

感服しちゃいました

この義祖母江代さんの若い頃の写真をみたことがある

凛しい美人でした

そんでね

俺のこと、旦那さんって、呼ぶんだ

ちょいと、旦那さん

ってね

なかなか言えないさ、孫の夫に向かって、旦那さん、なんてさ

旦那さん、すみませんね、あたしゃ足が悪いもんで、みっともない座りかたしてます。失礼でしょうが、勘弁してやってくださいな

義祖母はビシッとしてました

律儀な性格が伝わってきまして、私は、お茶をいれましょう、そう言って、たちあがりました

そうしますと、いやいや、トンでも御座いませんと、両手を振りましてね

台所で、コロッケを作っていた義母八重子に云うんです

八重子、なにしてんの、こちらの旦那に、お茶を入れなさい。全くこの子は!

八重子、こちらの旦那に、新聞を用意しなさい。退屈してるじゃないの

八重子、こちらの旦那に、座布団を、

八重子?

すみませんね、旦那さん、うちの娘、気が利かないんですよ。お恥ずかしい限りです。

しっかり育てたつもりなんですが、どうも私の不行き届きですみませんね、旦那さん

ふつつかものですが、宜しくお願いします。夫に先立たれた可哀想な娘なもんで

八重子だけでなく、キミエもお願いしますね

感服しましたね

私の前で、義母を叱りつけて、ふつつかものですが宜しくお願いしますと、頭を下げる。

孫娘よりも、娘を宜しくと、

感服しました

そんでね

ちょいと雑談になりました

たわいもない話です

義祖母江代さんが、聞いてきたんです

ところで、旦那さん、お祖母さんは、どうしてらっしゃるの?

突然の質問でした

父方の祖母は、私が中学2年の頃に、亡くなりました。母方の祖母は、去年、亡くなりました

義祖母江代さんは、そうなの、と小さく言いました

義祖母江代さんにしてみれば、同年代の女性に対する想いみたいなのが、あったんでしょう、戦中、戦後の激動期を生きていたわけだから

私は続けて話始めました

おばあちゃんは、18で結婚して、じいちゃんは42歳でした。子供5人生んで、旦那が55歳で死んじゃって、そんときは31歳でした。再婚しないで、子供を育てました。

私が話し出しますと、義祖母江代さんは、眠いのかなんなのか、目を閉じて、首をかまけたので、私はそのまま、母の話や、父の話や、母の兄弟の話をしてました

そうしますと、突然、義祖母江代さんが、顔を上げて言ったんです

あああなたねさっきの、お祖母さんの話、もうちょっとしてちょうだい。もっとお祖母さんの話をして、ちょうだい。

嬉しかったな

嬉しかった

たわいもない話だけど、俺の、お祖母ちゃんに興味を持ってくれた

俺は感激しながら、お祖母ちゃんの話をしたよ

60歳でミシンの仕事を始めました。当時の女性にとってミシンの仕事をしてるってカッコよかったみたいですよ。ミシンも工業用の速い奴を使ってね。若い子が真似し出したんだって。あたしの方が上手だって自慢してました。ずいぶん、お金稼いだみたいに言ってたけど、どんなもんだか。何しろ、贅沢なんてしない人でした。食べ物も、好き嫌いが多くてね、卵も嫌い、肉も嫌い、牛乳も飲まない、納豆もダメ、刺身もダメ。貧しさが身に付いていて、美味しいものを食べたくないんだって。質素な人でした。

私の話を、義祖母江代さんは、目を閉じたまんま、聞いていました。

すてきな、お祖母さんね。一度、お会いしたかったわ。ねえ、八重子

江代さんも、子供が六人かな

息子を一人

娘を一人亡くしてる

娘婿が再婚したあとも、孫の養育をしたり苦労したんだって

江代さん、私と妻キミエの結婚に親族が反対していたのも知っていたし、私が義父の葬式で、大口論したのも知ってるのに、こんなにも寛容に、私を心から感激させてくれた

嫁として

妻として

母として

祖母として

律儀な生きざまを伝えてくれました。

もしも生まれ変われるなら、この江代さんと、また出会いたいな

そう思える人でした

この江代さんも、この二年後位かな亡くなった。私が大好きな人の一人だな